国道の話題あれこれ
日本の一般的な道路は道路法に基づく道路で、高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道の4種類に分類されますが、ほかに林業のために設けられた林道や農業のために設けられた農道などがあります。
なお、道路法に基づく道路の現況は下表の通りです。
日本の道路の総延長および実延長 (令和元年3月31日現在; 出典:道路統計年報2020)
道路種別 | 総延長※1 | 実延長※2 |
高速自動車国道 | 9,204.8 km | 9,021.0 km |
一般国道 | 66,162.8 km | 55,874.2 km |
都道府県道 | 142,840.7 km | 129,754.0 km |
市町村道 | 1,062,864.5 km | 1,031,840.3 km |
合計 | 1,281,072.8 km | 1,226,489.4 km |
1 総延長 : 道路法の規定に基づき指定又は認定された路線の全延長
2 実延長 : 「総延長」から「重用延長※3」「未供用延長※4」「渡船延長※5」を除いた延長
3 重用延長 : 上級の路線に重複している区間の延長
4 未供用延長 : 路線の認定の告示がなされているが、まだ供用開始の告示がなされていない区間の延長
5 渡船延長 : 海上、河川、湖沼部分で渡船施設があり、道路法の規定に基づき供用開始されている区間の延長
国道は、明治9年(1876年)に道路が「国道」、「県道」、「里道」の3種類に分けられたのが始まりで、さらに一等、二等、三等の等級に区分されていました。その後、明治18年(1885年)に1号から44号の44路線と定められ国道表が一般に公表されましたが、北海道では函館港までの5号、札幌までの42号の2路線が指定されました。
等級の考え方
等級 | 概要 |
一等 | 東京より各開港場に達するもの(1~8号) |
二等 | 東京より伊勢の皇太神宮(9号)及び各府(当時は東京、京都、大阪の3府)各鎮台(鎮台とは陸軍の軍団。東京、仙台、名古屋、大阪、広島、熊本の6鎮台があった。)に達するもの(10、11号) |
三等 | 東京より各県庁に達するもの、各府、各鎮台を連絡するもの(12~44号) |
明治18年(1885年)の国道と現在の国道
路線名 | 明治18年当時の区間 | 現在の起終点 |
1号 | 日本橋~横浜港 | 東京都中央区~大阪市(旧東海道) |
2号 | 日本橋~大阪港(横浜までは1号) | 大阪市~北九州市(旧山陽道) |
3号 | 日本橋~神戸港(大阪までは2号) | 北九州市~鹿児島市 |
4号 | 日本橋~長崎港 | 日本橋~青森市(旧日光街道・奥州街道) |
5号 | 日本橋~新潟港 | 函館市~札幌市 |
6号 | 日本橋~函館港 | 日本橋~仙台市 |
42号 | 日本橋~札幌市(札幌本道;函館までは6号) | 浜松市(静岡県)~和歌山市 |
44号 | 日本橋~沖縄県(那覇) | 釧路市~根室市 |
以下の変遷を経て、現在の国道番号になりました。
1)大正8年(1918年)、旧道路法の制定により、明治期の路線を廃止し、東京を中心に神宮や各県庁所在地、師団司令部所在地などを結ぶ新たな国道(大正国道)路線、計64路線を指定
2)昭和27年(1952年)、現・道路法の制定により、国道は一級国道と二級国道とに分けられ、前者には一桁もしくは二桁、後者には三桁の番号を付与
3)昭和39年(1964年)、道路法改正により、一級国道と二級国道は一般国道に統合され、一般国道の追加指定には三桁の番号を付与
(備考)旧一級国道は1号~58号で59~99号は欠番。また、国道の統合により109、110、111、214、215、216号が欠番
(出典:国土交通省HP 道路「道の相談室」)
明治、大正時代の国道の起点は全て東京(日本橋の道路元標)でしたが、現在は道路法で示されている重要都市、人口10万人以上の市、特定重要港湾、重要な飛行場または国際観光上重要な地などが起点に該当し、一般的にはそれらと連絡する高速自動車国道または一般国道が終点となります。
(出典:国土交通省HP 道路「道の相談室」)
道路元標のある現在の日本橋
国道には路線が海を跨いで道路がつながっていない路線が24路線あり、海上区間の総延長は1,953km(平成31年3月末現在)に及びます。
海上区間が最長の国道は58号(鹿児島市~那覇市)で、路線延長850㎞のほぼ7割の610㎞が海上区間となっています。
北海道と本州の間の津軽海峡でも下北半島を通る279号と津軽半島を通る280号の2路線が海を跨いで青森県と函館市をつないでいます。
*ちなみに58号は路線延長も国内最長ですが、一般的に路線の長さは現道部分の実延長で比較することから「日本一長い国道」は実延長742.5㎞の4号(日本橋~青森市)とされています。
なお、最短の路線は174号(神戸港~神戸市中央区)で実延長0.2㎞です。
国道というと自動車交通量の比較的多い幹線道路をイメージする方が多いと思いますが、全国の国道の中には、整備が遅れているため自動車が通れない「自動車交通不能区間」があり、例えば青森県の339号には階段が残っていますし、291号の清水峠(新潟県)は獣道のような交通止め区間で早期の整備が望まれています。
なお、都道府県別に国道の改良率を見ると特に紀伊半島や四国に整備が遅れている県が多く、奈良県73.1%、徳島県73.5%、和歌山県78.1%と全国平均の92.9%を大きく下回っている。(改良率は令和元年3月末現在)
どちらも道路の利用規制ですが、基本的に「通行規制」は道路法により道路管理者(国土交通省、都道府県、市町村等)が行う規制で、「交通規制」は道路交通法により交通管理者(国土交通省、都道府県、市町村等)が行う規制です。
道路管理者は、道路法に基づいて、ある道路の一定区間について、交通が危険だと認められる場合、その通行を禁止したり、通行速度、通行重量、通行高さなどの制限を行うことができるとされており、これを一般的に「通行規制」と言います。(但し、道路管理者による規制でも「交通規制」と言われる場合もあります。)
一方、交通管理者(公安委員会、都道府県警察等)は、道路交通法に基づいて、道路における危険防止、交通の安全確保・円滑化や交通の障害防止のために必要と認められる場合、信号機・道路標識の設置・管理のほか、交通整理や通行の禁止などの「交通規制」を行うことができるとされています。
道路標識の豆知識
(出典:国土交通省九州地方整備局佐賀国道事務所ホームページ 「みちの話」)
17 標識にいろんな色があるのはどうして? 佐賀国道事務所 (mlit.go.jp)
危険や禁止によく使われる赤色
「規制標識」
消防車が赤いのも注意をひく色であり、人間の感覚に訴える効果があります。
また、観るだけで炎の色を連想させ火の用心を思い起こします。
注意によく使われる黄色
「警戒標識」
赤と同じようによく目立ち、人の目には前方に飛び出して近く大きく見えるという特性から、標識以外にも児童の帽子など注意を喚起するものに使われています。
目に付きやすく読みとりやすい青色
「指示標識」「案内標識」
くっきりと明るい青は、視認性が高いため、情報を伝える色としてよく使用されています。特に「白地に青」や「青地に白」の文字は、瞬時に判断し、正しく情報が伝わりやすい効果があります。
気持ちを落ち着かせ和らげる効果があり、
速いスピードで走っていても確実に読みとれる緑色
「高速道路標識」
自然界に最も多いカラーで、目に優しく、頭をすっきりさせる作用があり、安全・安心のサインでもあるので非常口への誘導として使われています。
(出典:国土交通省九州地方整備局佐賀国道事務所ホームページ 「みちの話」)
18 標識に「丸」とか「四角」とかいろんな形があるのはなぜ? 佐賀国道事務所 (mlit.go.jp)
役割によって変わる標識の形
実際よりも大きく見える性質がある丸型は、「制限速度」など、特に注意が必要な標識に使われます。
どっしりと安定感のある四角は「案内」や「誘導」をします。また、「警戒標識」は角を上にした不安定な形で注意をうながします。
不安定な形のため注意を引きやすい三角は、「一時停止」など特に重要な規制を知らせるのに使われます。
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(出典:国土交通省ホームページ 道路 「道路標識」)
【道路標識一覧】
【道路標識の種類】
【案内標識の種類】
目的地や通過地の方面、方向及び距離を示す案内標識には、次の3種類があります。
<105系標識>
<106系標識>
<108系標識>
方面、方向及び距離を案内し、2車線以下の道路の交差点手前に設置。
方面及び距離を案内し、交差点を過ぎたところなどに設置。
方面及び方向を案内し、交差点手前に設置。
【地名の選定】
経路案内に用いる地名は①基準地、②重要地、③主要地、④一般地に区分され、以下の条件で選定されています。
注) | 生活圏とは、地域を階層的な圏域(一次生活圏、二次生活圏、地方生活圏)に区分したものであり、各圏域については以下のような構成を標準としています。 | |
一次生活圏・・・ | 役場、診療所、集会所、小中学校等基礎的な公共公益的施設を中心部に持ち、それらのサービスが及ぶ地域。圏域範囲は半径4~6km程度。 | |
二次生活圏・・・ | 高度の買い物ができる商店街、専門医をもつ病院、高等学校等を中心部に持ち、いくつかの一次生活圏から構成される地域。圏域範囲は半径6~10km程度。 | |
地方生活圏・・・ | 総合病院、各種学校、中央市場等の広域利用施設を中心部に持ち、いくつかの二次生活圏から構成される地域。圏域範囲は半径20~30km程度。 |
案内する地名は、以下の表の第1ランクの地名のうち最も近い地名を表示することを原則としています。(106系標識(方面及び距離を案内するもの)はこれに加え基準地を最上段に表示)
また、主要幹線道路、幹線道路の案内標識で2つの地名が表示される場合は、左側が最も近い第1ランク地名、右側が最も近い第2ランク地名となります(ケース1)。ただし、最も近い第1ランク地名が最も近い第2ランク地名よりも近くにある場合は、右側が最も近い第1ランク地名、左側がその次に近い第1ランク地名となります(ケース2)。
欧米諸国は馬車の時代からの長い道路交通の歴史があり、それぞれ独自の道路標識を発達させてきましたが、大きく分けると、欧州方式と米国方式に区分されます。戦後、欧州において道路標識の国際的統一の動きが生まれ、1953年に68か国の参加により国際連合道路標識が発行されましたが、米国方式を採用している米国、カナダなどの国々は加盟していません。
<欧州方式>
道路網が国境を越えて発展し、言葉の壁を越えて理解できる道路標識の表示が必要とされたことから、シンボライズした記号が用いられています。また、視認性と識別性を高めるために色彩や形状に工夫がなされている点が特徴です。欧州各国で採用され、国際連合標識の基となりました。
<米国方式>
原則として四角形の標識で、地色は主として白または黄色です。言葉による表示を原則として、記号は単純に誰にでも理解できるものに限って採用しています。米国のほか、カナダや中南米で採用されています。
<国際連合道路標識>
フランス、ドイツ、イタリアの標識を母体として作成されました。国際性と速認性に重点を置いて、言葉によらない形状と色彩と記号で表現しています。
(出典:国土交通省ホームページ 道路 「道路標識」)