防災の話題9「人の命を守る「ガーディアン」」

 「ガーディアン」と言うとタイムズと並ぶ英国の三大新聞の一つを思い浮かべる方が多いかもしれません。あるいは、小さなお子さんをお持ちの方なら、チャイルドシート「ガーディアン」の方を連想するかもしれません。
 「ガーディアン」とは、英語(Guardian)で守護者とか保護者という意味なので、いずれもその語義に沿って命名したのでしょう。
ガーディアン紙は、今から約200年前に選挙法改正を求めた集会を騎兵隊が鎮圧して多数の死傷者を出したピータールー虐殺事件をきっかけとして誕生した、言わば「民衆の守り神」、そして、日本でのシートベルトの草分けタカタもチャイルドシートに「子供の命の守り神」という思いを込めたに違いありません。
 余談ですが、この子供用シートベルトの誕生には意外な狙いもあって、当時、シートベルトは車への装備は法律で義務化されたものの装着義務はなかったことから、装着率が伸び悩んでいたので、まず子供の装着を進めれば大人の装着も進むのではと一計を案じたとのこと。たしかに、シートベルト着用は今でこそ法律で義務化されて当たり前になりましたが、ついこの間まで、面倒がって付けない方々も普通にいたことを思い出しました。

 さて、防災の分野でも災害から人の命を守る「ザ・ガーディアン」が誕生しました。
曾澤高圧コンクリート(本社・苫小牧市)がマサチューセッツ工科大学発の航空宇宙ベンチャーと開発した自動飛行のエンジンドローンによる発災時の地域監視システム「ザ・ガーディアン」です。衛星撮像データで川幅の経時変化を監視し、降雨予測データと地表面をデジタル化した三次元データを組み合わせて河川氾濫を早期に予測できるシステムです。
 開発した曾澤高圧コンクリートは、創業90年近い老舗のコンクリートメーカーなのですが、脱炭素化技術として世界から注目されているバクテリアの代謝機能を活用した自己治癒コンクリートの開発(*参考)やアームロボット式のコンクリート3Dプリンタ(c3dp)を利用したユニークなデザインの建築物・造形物の制作など、次代を見据えた先進的なチャレンジを続けている会社です。
 ちなみに、今回開発した「ザ・ガーディアン」は、東日本大震災の際に報道ヘリの映像で、津波の接近を知らずに歩いている被災地の通行人の姿が映し出されているのを見て、「この映像を見せられたら」と思った曾澤祥弘社長の原体験が発端とのこと。1700以上ある全国の自治体でドローンが一斉にホバリングして日本中を警戒するという社長の夢が実現する日が将来くるかもしれません。

 ガーディアンは、他にも米海軍の掃海艦の名前で使われ、最近では米国製の無人航空機「シーガーディアン」が2022年10月からEEZ監視などで海上保安庁が運用を開始するというニュースがネットで流れていました。
 世界では様々な用途のガーディアンが誕生していますが、平和利用に徹して、文字通り、人の命の守護者であり続けて欲しいと願うばかりです。

(*参考) バクテリアを利用した自己治癒コンクリート「Basilisk(バジリスク)」 土木の話題 21「社会資本メンテナンス時代の土木技術」

2022年9月第2号 No.127号
(文責:小町谷信彦)