ブラックアウトとホワイトアウト
年末になると1年を振り返って流行語大賞が選ばれますが、今年は「そだねー」が大賞に輝きました。流行語からも何かと北海道絡みの話題が多かった1年と言えそうですが、我々道民としては、「ブラックアウト」の方が切実な経験として印象に残ったのではないでしょうか?
北海道胆振東部地震に伴う全道停電という未曽有の事態は、大きな揺れを観測しなかった地域の人達にとっては、何で突然停電なのか訳のわからない、まさに青天のへきれきであったに違いありません。
幾つもの不具合が重なり、本来あるはずのない想定外の状況に陥ったということのようですが、災害時のセーフティーネットに関して大きな課題を残しました。この惨事が9月で真冬でなかったのは不幸中の幸いですが、これを教訓として緊急かつ徹底的な対策の実施を望むところです。
ところで、これから冬を迎えるこの時期、怖いのはブラックアウトだけではなく、ホワイトのアウト、「ホワイトアウト」です。
「ホワイトアウト」は、吹雪とご縁のない地域の方々には耳慣れない言葉かもしれませんが、雪で視界が真っ白になり、方向や地形の起伏などが識別不能となる現象です。ホワイトアウトの意味をネットで調べてみると、雪山や南極などで近くの視界が良好なのに雪や雲の乱反射などで雪原と雲が一続きに見えたり、足元の状態が識別できなくなり、雪庇やクレバスを踏み抜いたりという危険な状態になること、という説明も記されていました。山登りをする人には、以前からその怖さが知られていたものですが、ここ数年は冬道の交通事故に関連して頻繁に使われるようになりました。
防災対策として吹雪防止柵の設置や防雪林の整備が進められていますが、吹雪の時には出掛けないのが一番の対策なのでしょうが、現実にはなかなか難しいこともあります。そんな時のために(独法)寒地土木研究所が、一般市民に「吹雪の視界情報」(北海道の道路情報総合サイト“北の道ナビ¨)を情報提供し注意喚起しています。
URL: http://northern-road.jp/navi/
また、北海道では低温で雪がサラサラなので晴れ渡った青空でも強風が吹くと積もった粉雪が舞い上がりホワイトアウト状態になることもあります。本州の湿った雪ではあまり見られない北海道独特の現象です。ブラックアイスバーン(湿潤路面のように黒く見える薄氷の凍結路面)状態の道路でホワイトアウトということさえ起こり得るのです。
ブラックアウトもホワイトアウトも一瞬にして先が見えなくなる状況を表した言葉ですが、ブラックアウトは、灯火管制、報道管制、言論統制といった様々な制限にも使われ、中央銀行の金融政策決定会合の前後の時期に会合のメンバーに対して金融政策に関する発言を禁じるルールを指して言うこともあるようです。よく日銀総裁の発言で市場が動くことがありますが、そういう影響を防ぐためのルールなのです。
なるほどと思ったのは、「デジタルテレビ放送で電波が受信不能となり画面が暗転」とか「一眼レフカメラのファインダーが見えなくなること」。
他にも「船の操舵ができなくなること」、「記憶を失うこと」、「宇宙飛行などで脳への血流が下がることで起きる症状」等々、色々とあるものですね。
専門領域が違えば、思い浮かべるものは、十人十色ということになりそうです。
昨今、「気が置けない」が「気楽に付き合える」ではなく「信用できない」という真逆の意味で使われたり、「早急」の読み方が本来の「さっきゅう」ではなく「そうきゅう」が多数派になったりと変化が激しく、まさに「言葉は生き物」だと実感させられますが、変幻自在のカメレオンの場合もあるのですね。
冬本番。ブラックとホワイトには要注意です。
(文責:小町谷信彦)
2018年12月第2号 No.47