防災の話題 4「災害被害額~世界の中で日本は? 」

災害被害額~世界の中で日本は?

3月11日は、日本にとっては忘れがたい東日本大震災の日。
あまり知られていませんが「コラムの日」でもあるのです。1751年のこの日に英国の新聞が世界で初めてコラムの連載を始めたそうです。
コラム担当者の私には身の引き締まる日でもあるのですが、3.11と言えば、やはり東日本大震災を連想されたことでしょう。8年前のこの日に東日本の太平洋岸を襲い世界中を震撼させた衝撃的な巨大津波の映像が脳裏にリアルに想い起こされた方も多いと思います。

この大震災による被害額は、世界銀行の推計では直接的なものだけでも約17兆円にのぼり、阪神・淡路大震災の約10兆円をはるかに上回るこの経済的損失は、自然災害としては史上最大とされています。
では、近年、世界で発生した大規模自然災害を被害額試算(人的損失や被災地での生産減少による他地域への影響を除く)により作成されたランキングから概観して見ましょう。

第1位  東日本大震災(日本;2011年)
第2位  阪神・淡路大震災(日本;1995年)
第3位  四川大地震(中国;2008年)
第4位  ハリケーン・カトリーナ(米国;2005年)
ハリケーン・ハービー(米国;2017年)
第6位  ハリケーン・マリア(ドミニカ、プエルトリコ;2017年)
第7位  ハリケーン・サンディ(米国;2012年)
第8位  ハリケーン・イルマ(プエルトリコ、バミューダ諸島など;2017年)
第9位  北米の干ばつ(米国;1988~89年)
第10位 北米の干ばつ(米国、メキシコ、カナダ;2012~13年)

まず、トップ2が、国土面積が全世界の0.3%にも満たない日本で発生したというのですから、日本が如何に自然災害と向き合っているのかを改めて認識させられます。
ランクアップした災害を見ると、米国周辺のハリケーンと干ばつが目を引きます。
災害死亡者数では、中国の地震、洪水やインド周辺のサイクロンが上位に並ぶのですが、被害額という切り口で見ると経済的な集積の大きい日本や米国での災害がクローズアップされる傾向はありそうです。

一方、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)が過去20年間(1998~2017年)の自然災害によって発生した経済損失額を国別に算定していますが、最大は米国の9448億ドル、2位が中国で4922億ドル、そして日本は3763ドルで第3位となっています。
日本は、面積で比べれば25倍の米国の4割にも相当する災害による経済的損失を被っているのですから、そのハンディは大変なものだと言わざるを得ません。

全世界で発生したマグニチュード6以上の地震の約2割が日本で発生し、全世界の活火山の7%が日本にあるという事実を冷静に受け止めると、災害被害額ランキングが示す結果は至極当然と言えるのかもしれません。
東海地震、東南海地震、南海地震、千島海溝周辺海溝型地震と、こんがらがるほど様々な地震に関する警鐘が鳴らされている今日、NHK番組の「チコちゃんに叱られる」ではありませんが、地震の巣のような日本列島の上で、私を含めて「災害の危険も気にせずにボーっと生きている日本人のなんと多いことか!」

そして、地震のみならず大雨・豪雨、台風、大雪と美しい四季のある日本は災害と表裏一体の国なのだと改めて感じるのです。3.11という日のコラムとして、やはり考えたいのは「自然災害」に対する心構えを今一度持たなくてはいけない、ということでしょう。

                       (文責:小町谷信彦)
2019年3月第3号 No.55