橋の話題32「絶景を楽しめる橋~北海道の紅葉スポットあれこれ」

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 本州ではまだまだ夏が続く中、北海道では今週早くも、大雪の山々の上の方では紅葉が見頃というニュースが流れてきました。
大雪山の黒岳や旭岳は、もちろん歩いて登ると真っ赤に染まったナナカマドの紅葉の鮮やかさへの感動はひとしおと思いますが、ロープウェイから俯瞰した一面の紅葉も中々のものです。
 さて、一足早い北海道の紅葉ですが、本州とは樹木の違いから一味違う紅葉風景を楽しむことができます。
それはと言うと、北海道は気候が寒冷なため、エゾマツやトドマツといった針葉樹がモミジやカエデといった広葉樹の中に混じり、濃緑の中に赤や黄色が入り混じったモザイクになり、全山真っ赤という派手さはないものの、緑の背景に浮き出る紅葉のコントラストは北海道ならではの芸術的な風景が創り出されるのです。

 というわけで今回の橋の話題は、そんな北海道の紅葉を楽しめる橋にスポットライトを当ててみました。
まずご紹介したいのは、札幌の奥座敷「定山渓温泉」です。
 定山渓は、江戸時代末期から明治初期にかけて北海道を探検し、「北海道」の名付け親としても知られる松浦武四郎が発見した豊平川源流山間の温泉地です。その後、修験僧の美山定山(びざんじょうざん)が「鹿が傷を癒す秘湯があるらしい」との噂を聞きつけてこの地に入り温泉を開発し、定山の名前に由来する「常山渓」という名称が、いつしか「定山渓」と呼ばれるようになり、今日に至ったとのこと。開拓使が開削した最初の道路「本願寺道路」と共に北海道  開拓の草分けとして、その名を刻んでいます。
 ところで、切り立った渓谷はしばしば紅葉の絶景となりますが、それは川を挟んだ両岸の山々が立体的に紅葉に彩られると、視界に占める圧倒的なボリューム感が迫力を生み出すからなのでしょう。それで川の中央から両岸の山々を遥か遠くまで見渡せる橋の上は、最高の眺望スポットとなるのです。
 この定山渓の紅葉スポットとしては、豊平峡ダムの展望台が最大の観光名所となっていますが、錦橋から眺める「舞鶴の瀞(とろ)」も紅葉の絶景としてお薦めです。他に二見吊り橋や定山渓大橋からの紅葉も中々です。

 次に札幌近郊の紅葉スポットとしてお薦めしたいのが、夕張の「滝の上公園」です。「ポンソウカムイコタン(北方の神々が住むところ)」と言われたこの渓谷は、大小の滝と奇岩が連なる千鳥ヶ滝と奇岩がそびえる竜仙峡など、とりわけ秋は、紅葉に彩られた渓谷美は圧巻。人道橋の「滝の吊り橋」からは、千鳥ヶ滝や渓谷全体が見渡せ、歩行者専用の吊り橋なのでゆったりと秋のひと時を楽しめます。

滝の上公園 千鳥ヶ滝(写真提供:夕張市)

 ほかにも、登別の新登別大橋は、高低差120mの谷に架かったアーチ橋の上からの雄大な紅葉、神居大橋から眺める神居古潭の荒々しい渓流の紅葉等々、数え上げれば切りがありません。
 このコラムは別に秋の北海道観光キャンペーンの一環ではありませんが、秋の北海道をご存知ない道外の方には、北海道の紅葉と秋の味覚巡りのドライブ観光を是非経験して頂き、北海道の魅力をさらに知って頂ければ、と願っております。

2024年9月第2号No.152
(文責:小町谷信彦)