橋の話題 13「戦場に架かる橋・戦場に架ける橋」

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戦場に架かる橋・戦場に架ける橋

橋は、平常時は産業や市民生活を支える平和な社会基盤ですが、ひとたび戦争になると戦車や兵隊の移動、軍事物資の運搬のための軍事基盤としての役割が鮮明になります。そして、戦場に架かる橋は、交戦国側から軍事戦略上、破壊すべき重要ターゲットと見なされます。
実際、ベトナム戦争中、米軍は組織的大規模爆撃“北爆”で鉄道橋『ホンホア橋』などを主要な空爆目標とし、物資輸送の大動脈だった鉄道網を分断し、ベトナム軍の南進を阻止しようとしました。そして、最大79機ものB52爆撃機の大編隊による凄まじい空爆の連続は、橋を何回も通行不能にするダメージを与え、破壊こそ出来なかったもののベトナム軍に鉄道やトラックによる大量輸送を断念させ、以降、輸送は人力や動物による“ホーチミンルート”に切り替わりました。
それにしても、今なら数発のミサイルで簡単に橋脚を破壊し落橋なのでしょうが、当時の技術では雨アラレのように爆弾を落としても当たらなかったのですね。一方、ベトナム戦争の主役B52は半世紀たった現在もこれをしのぐ新型機が登場せずいまだに現役。パイロットが親子2代で同一の機体を操縦というケースもあるそうで、この違いは何なんでしょうか? 軍事技術の世界はよくわかりません。

次はギリシャ時代に戦場に架けられたユニークな橋の話です。皆さんは、海運と交易で栄えた“ティルス”というフェニキア人の都市国家をご存知でしょうか? ティルスは、紀元前332年にアレキサンダー大王の軍に攻められましたが、市街地に面した島を要塞化して立て籠り、徹底抗戦しました。四囲の海を天然の要害とした島を大王は攻めあぐねますが、1kmも離れた島に橋を架ける技術などありません。そこで、アレキサンダーは一計を案じます。ティルスの市街地は、その約250年前のバビロニアの王ネブガドネザルとの戦いで多くの建物が破壊され、瓦礫と化していましたが、その瓦礫を集めて海を埋め立て島と地続きにしました。いわば“瓦礫橋”、グッドアイディアですね!
ところで、興味深いことに、この一連の出来事は、その約260年前に書かれたとされる旧約聖書のエゼキエル書で預言されています。(ちなみに、ネブガドネザル王のティルス攻略も同書で預言されています。)余談ですが、アレキサンダー大王の大帝国建設についても、紀元前536年に書かれたとされる旧約聖書のダニエル書に預言があり、1世紀の歴史家ヨセフスによると、大王がペルシャに勝利する前にエルサレムでダニエル書を見せられた際に「この預言の言葉はペルシャに関係した自分の軍事行動のことを言っている」と語ったとのこと。
さて、聖書というとイエス・キリストの物語を連想される方が多いのですが、それは後編の新約聖書の方で、前編の旧約聖書はあまり馴染みがないようです。ご参考までに、旧約聖書は、紀元前16世紀から紀元前5世紀までの間に30人ほどの筆者により書き連ねられた39冊の書の集合体で、イエス誕生以前の中東世界の歴史と預言、律法が綴られた壮大かつ緻密な歴史書です。古典的名作『十戒』をご覧になった方は、主役チャールトン・ヘストンが演じたモーセを覚えておられると思いますが、旧約聖書には、他にもエステル、ヨセフ、サムソン、ルツ等々、色々面白い話が登場しますので、是非一度ご覧あれ!   (N.K)