橋の話題 16「町のシンボルとしての橋」

町のシンボルとしての橋

私は札幌に住んでいますが、「町のシンボルは何?」と問われたならば、多くの方は、大通公園、あるいはテレビ塔と答えるのでは、と思います。皆さんの町ではいかがでしょうか?
町のシンボルは、そこに住んでいる人とよそから来た観光客では異なる場合もあるかもしれませんが、おおむね、観光ポスターでクローズアップされているものが町のイメージを形作っているケースが多いでしょう。

さらに絞り込んで「町のシンボルとしての橋」を考えてみると、北海道では、室蘭の白鳥大橋や釧路の幣舞橋といったところが、町のシンボルとなっている代表例と言えるでしょう。

 

では、それらの橋の「シンボル」たるゆえんはどこにあるのでしょうか。
まずは、橋の外観。その巨大なスケールとシンプルな姿形はランドマークになりやすいとは言えそうです。一方、橋上に設置された彫像やモニュメント、欄干の装飾やバルコニーからの風景等々、ケースバイケースで様々な要素が評価されているのに気づきます。あるいは、橋そのものだけではなく、橋を含めた風景、橋から見える景色も重要です。
白鳥大橋は、吊橋のエレガントで曲線的で優美な姿が市内の多くの場所から眺められるランドマークとして親しまれているのでしょう。今年は6月13日に開通20周年とのことで様々な記念イベントが実施、予定されていますが、市民の誇り、観光客誘致の源泉としてこれまで以上に活用されることが期待されています。

ところ変わって、釧路市の幣舞橋は、繁華街に程近く人や車の往来の多い立地と海に沈む夕日の絶景スポットとしてその地位を不動のものにしたのかもしれません。
さらに、もう一つのシンボル性を醸し出す要素に歴史性、すなわち古いものの魅力があると思うのですが、残念ながら北海道では、このタイプの橋は多いとは言えないでしょう。
現存する唯一の「北海道3大名橋」の旭川の旭橋は、その歴史と風格のゆえに町のシンボルとして市民に愛されているようですが、札幌の歴史を伝える創成橋は、復元され、周辺の創成川沿いも綺麗に緑道としてよみがえったとはいえ、町の片隅に埋もれている感じがして少々残念に思います。

さらにところ変わって海外に目を向けると、「もはや街のシンボル!?美しすぎる世界の7選」というインターネットサイトがありました。紹介されているのはニューヨークのブルックリン橋、ロンドンのタワーブリッジ、シドニーのハーバーブリッジ等々。その中で最も新しい橋はサンフランシスコのゴールデンゲートブリッジなのですが、新しいと言っても80年も前、1937年の完成です。
ベネチアのリアルト橋やプラハのカレル橋の持つ400年とか600年の歴史は別格としてもこれらの持つ歴史の重みは写真を眺めているだけで一度訪れて見たくなる誘惑に駆られます。
時間というふるいと風雪にも耐えて、後世の人々にも愛される橋を子孫への遺産として残していきたいものです。

(注)「北海道の土木の話」に「北海道の古い橋・美しい橋 写真集」を新設しました。ぜひ一度チェックを!   お待ちしています。               

(文責:小町谷信彦) 2018年6月第4号 No.29