最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)やCN(カーボンニュートラル;脱炭素)という略語は、かなり一般的に浸透してきたように感じますが、GX(グリーントランスフォーメーション)は、まだ馴染みのない方もおられるかもしれません。
GXは、昨今の地球温暖化問題の深刻化に伴い、地球規模で取り組むべき課題として注目されるようになった世界の潮流で、化石燃料から温室効果ガスを発生させない再生可能なクリーンエネルギーに転換し、経済社会システム全体の変革を目指す取り組みです。
わが国でも、2020年の菅義偉首相の「2050年カーボンニュートラル宣言」を踏まえて、経済産業省が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」をまとめたのを端緒に取り組みが始まり、岸田内閣が2022年に「新しい資本主義」の重点投資分野の一つにGXを位置付けたことから、一挙に産業界の動きも加速し、国土交通省も「グリーン社会の実現に向けた『国土交通グリーンチャレンジ』」(*注)の推進に注力しています。
建設業に関して、DXは生産性向上のための取組として既に進めている「i-Cnstruction」などの延長上にあるので、その必要性やメリットが比較的わかりやすいのですが、CNやCNを包含する概念とも言えるGXは単に規制や負担が増えるだけと映るかもしれません。しかし、温暖化が起因とされる近年の世界的な自然災害の激甚化を緩和できれば、災害による莫大な経済損失を減らし、建設的な投資に振り向ける余裕が生じます。また、GXは省エネや省資源を促進し、資源の有効活用が図られるので、各々の企業にとってコスト削減の経済的メリットがあるだけでなく、資源枯渇や廃棄物処理といった地球環境問題の改善にも大きく寄与するのです。
例えば、工事現場でのソーラー電源、エコカー(作業用車両)、省エネ型建設機械、LED照明の使用や持続可能な建設材料の使用、環境配慮型コンクリートの開発・導入など、脱炭素、循環型、自然共生をキーワードとして様々な環境寄与が考えられます。
さらに「サプライチェーン排出量」にも注目する必要が指摘されています。すなわち、原材料調達から製造・物流・販売・廃棄までの一連のプロセスで生じる温室効果ガス全体を極力減らすように調達先を調整することにより、少なからずCNに貢献できるというわけです。
現代は、VUCA(ブカ、ブーカ)の時代と言われています。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の中に私達は暮らしているというのです。
そんな先行き不透明で複雑な世界を漂い、デリケートな操縦を余儀なくされている宇宙船地球号ですが、温暖化をはじめとした様々な環境問題は、回避し損なうと激突する巨大隕石に例えられるかもしれません。
そして、DX、CN、GXは、その解決のために今考えられる最良のツールと言えそうです。
我々建設業に関しても、DX、CN、GXを三位一体で推進することが、宇宙船地球号の一員としての重要ミッションだと言うことをよく自覚する必要があるかもしれません。
2022年10月第1号 No.128号
(文責:小町谷信彦)