最近、にわかにAI というワードが世の中に氾濫し出しました。
AIとは、Artificial Inteligenceの略、すなわち「人工知能」ですが、将棋の藤井壮太8冠が、AI を相手に腕を磨いているという話が、AI への世間の注目を集める一因となったのかもしれません。
少し前までは聞き慣れなかったDXは、我々の建設業界でも次世代ツールとして普通に認知されるようになりましたが、こちらはほぼビジネスの世界だけが対象なのに対して、AI は仕事とか研究とかの領域だけではなく、私達の日常生活にも活用され、おそらく生活スタイルにも影響を及ぼす画期的な技術と言えそうです。
それで、土木事業でもAI の活用はいずれ大きな課題として浮上し、その成否が建設会社の死活に関わる時代もやってくるかもしれません。
さて、産業の画期的な発展は、大きな発明に伴う劇的な構造変化によって成し遂げられます。代表的なのは、ワットの蒸気機関の発明による産業革命ですが、それまで人力に頼っていた生産活動の多くが、機械が生み出す動力によって飛躍的に効率化されました。
そして、現代のIT・情報技術の発達は、いわゆる「情報革命」をもたらし、仕事の生産性と日常生活の利便性を飛躍的に向上させました。
かつて、SF小説が描いた未来の生活にはインターネットは登場しませんでした。しかし、現実は、このインターネットという想定外の発明が世界中の人々のライフスタイルに甚大な影響を与ました。
それまでインターネットが生み出した「情報の価値」は、これまで人々がほとんど意識したことのないものでした。インターネットによって、特定のサービスを利用したい人と供給したい人とを瞬時に繋ぐことが可能になり、様々な新たなサービスが誕生しました。家に居ながらにレストランの食事が味わえるウーバーイーツ、世界中の旅行したい人と宿泊施設を提供したい人とをマッチングするエアビーアンドビー等々です。ウーバーイーツが、地球から400㎞離れた国際宇宙ステーションまで8時間半かけて食品を運んだという話は、実に21世紀的で面白い話ではないでしょうか?
そして、情報革命の次に来る革命的な変化は、このAI が震源地になる予感がします。
現地一品生産の土木事業は、経験工学の代表的な産業と言えるので、膨大なデータを分析、応用して人間に代わって判断するAI は、とても相性の良い分野だと思われます。現場では、これまで現場技術者がその経験と知識に基づいて臨機応変に判断していたものを、これからはAI が様々な情報を提供して、より的確な判断ができるようにサポートしてくれる時代になるのかもしれません。
土木分野では、既にスーパーゼネコンなどが、建設プロジェクトのプランニング、物流マネジメント・資材保管管理、自立作業ロボット(各種AI搭載重機)、ドローンによる現場監視、インフラメンテナンス、山岳トンネルの切羽評価システム等々、様々な視点からの検討を進めているようです。
なかなか、弊社のような小さな建設会社ではできることには限りがありますが、AI の今後の動向を注視していく必要がありそうですね。
令和5年12月第1号(No.138)
(文責:小町谷信彦)