土木の話題16「アフターコロナと土木業界」

アフターコロナと土木業界

新型コロナウイルス感染症の全世界的蔓延拡大も欧米ではピークを越え、外出規制の解除が進んできた矢先、米国では爆発的な感染が再発してしまいました。
治療手段が未開発で、抜本的な対策のない現段階では、医療崩壊を起こさないよう感染拡大防止対策と経済活動のバランスを取り、ウィズコロナで新型コロナと上手に付き合っていくしかないのでしょう。

しかし、新型コロナの影響は、世界経済のみならず社会の仕組みそのものにも地殻変動をもたらすとの予測から、アフターコロナの近未来論が世間を賑わせています。コロナ禍を時代の分岐点と捉えると、コロナ以前はビフォーコロナ(BC)ということになりますが、西暦の元祖BCはビフォーキリストの略とは広く知られています。
では、紀元後はAC(アフターキリスト)ではなく何故ADなのかご存知の方は意外と少ないかもしれません。それもそのはず、ローマ時代の公用語ラテン語“Anno Domini”(アンノ・ドミニ;「主(イエス・キリスト)の年に」の意)の略なのです。

さて、イエスの誕生年が歴史年表でBC2年とされていることに気付いた方は、西暦はキリストの誕生を原点とした暦なのに何故?という疑問を持たれたことでしょう。
それは、西暦を初めて定めた6世紀のローマ帝国時代に考えられていたイエスの誕生年が、後年、新たに古文書が発見されて1年後だったことが判明し、1年のずれが生じたというわけです。
余談ですが、イエス・キリストの誕生日は12月25日が世界の常識とされていますが、実は10月頃だったようです。聖書にはイエス誕生の夜に空が明るくなり放牧をしていた羊飼いたちがそれを知ったという記述があり、畜舎に羊を入れている冬ではなく放牧が可能な季節で他の関連情報も含めてそう推察されます。
そもそも、クリスマスを祝う風習は、イエスの死後、AD243年以降に始まったもので、古代ローマの太陽神を冬至に祝う儀式と結びついて始まったと考えられ、イエス自身は磔(はりつけ)にされる直前の最後の晩餐で「私の死を記念して祝いなさい」と弟子たちに命じ、ご自分の誕生日より命日を大事に考えていたのです。

さて、アフターコロナでは、コロナ対策ですっかりお馴染みになったテレワークやWEB会議が一気に加速しそうな気配です。一昔前から東京一極集中解消のための一つの方策として提唱されつつもずっと低調だったテレワークですが、やむを得ず試行したら思いのほか簡単で効果的、通勤もなくなり、一度始めたらやめられないということが実証されたと言えそうです。
北海道は20年余り前に先駆的な女性ベンチャー起業家が北見市でいち早くテレワークの会社を立ち上げた先駆的な土地柄でもあり、地域活性化のチャンスが広がりそうです。
今後、テレワークによる職場の分散が、本社近隣地域のサテライトオフィスへの分散という程度なのか、文字通り日本全国に分散するのか、会社の業務内容、職種によっても様々なのでしょうが、その展開動向に注目したいところです。

では、土木業界のアフターコロナはどうなるのでしょうか?
これまでWEB会議にも馴染みのなかった当業界でも、リモート技術の活用が急速に進みそうです。
国交省の一部の工事では事務所で監督員がウェアラブルカメラを装着した建設会社の現場技術者とWEB会議システムにより画像をリアルタイムで共有し、工事の確認・指示を行う遠隔工事監督の試行が始まり、2019年度には北海道内でも北海道開発局の工事で堀口組(留萌市)が試行しています。
そして、今春(2020年)スタートした第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスによる大容量データ超高速通信は、より精細な画像をほぼタイムラグなしに送受信を可能にしたので、遠隔での監視・監督の動きは一層加速することになるでしょう。
また、最近では持ち運び型の基地局を現場に設置して、20km以上離れた事務所から重機を操作して無人で土地の造成を行う技術も開発されましたし、トンネル工事現場の監視に4足歩行型ロボットを活用する実証実験も行われています。監視・監督のみならず、実際の工事作業までもが遠隔で行われるようになってきたのです。

これまで建設業は、現場でないと仕事にならない代表的な業態と見なされてきましたが、コロナ禍を契機に様相が一変するかもしれません。
既に構造物の3次元シミュレーションやi-ConstructionによるIT施工・電子データ管理、IT機器を活用した安全管理など、建設業のハイテク化は進みつつあります。
アフターコロナには、「3K(きつい、危険、汚い)って何?」と言われるようなカッコ良くてスマートな建設業に生まれ変わりたいものです。

(文責:小町谷信彦)
2020年6月第2号 No.79号