道の話題35「進化する「道の駅」~「小さな拠点」づくりと「防災道の駅」

 近年、「道の駅」の進化に目が離せません。国土交通省は、道の駅の地域活性化拠点としてのポテンシャルに着目し、平成26年度から「地域活性化の拠点として、特に優れた機能を発揮している道の駅」を全国モデル「道の駅」、「今後の重点支援で効果的な取組が期待できる道の駅」を重点「道の駅」に指定し、道の駅を中心とした「小さな拠点」づくりを支援しています。
 道の駅は、制度が創設された1993(平成5)年のわずか103か所から、今や全国で1,194か所(2022年6月末現在)を数えるまでになり、地域内外からの多くの来訪者の憩いの場となっています。
元々は、道路利用者のための「休憩機能」、道路利用者や地域の人々のための「情報発信機能」、道の駅を核としてその地域の町同士を連携する「地域の連携機能」という3つの機能を目的とし設置されましたが、深刻化する地域の人口減少への処方箋「町のコンパクト化」の柱として期待されている「小さな拠点」づくりに道の駅を活用しようと言うわけです。
すなわち、道の駅には必須の休憩・情報提供等のサービス施設のほかに、学校や医療施設、行政施設等の住民の暮らしを支える様々な施設を併設するという取組が進んでいます。
 例えば、道の駅「瀬替えの郷せんだ」(新潟県十日町)は、「あいマート」が住民の買い物や観光客への農産物等の販売、地区の女性達が中心の「お食事処ながせ」が食事の提供を担い、地域交流も活気づいています。そして、これらを一括して運営する「株式会社あいポート仙田」は、民間の機動性を活かしつつ、農家の担い手確保のための「営農継続支援事業」や高齢者支援のための「冬期の雪下ろし支援事業」、「高齢者通所事業」なども展開し、地域生活に欠かせない様々な公共的サービスを包括的に提供する役割も果たしています。
 また、道の駅「奥永源寺の里」(滋賀県東近江市)は、廃校となった中学校舎を活用した道の駅ですが、市役所出張所、市民サロン、出張診療所、デイサービスセンター、コミュニティセンターが併設された複合施設で、まさに「小さな拠点」のモデルケースと言えるかもしれません。

 さて、道の駅を中心とした「小さな拠点」づくりは、いわば平常時のための取組ですが、近年各地で頻発している災害時に防災拠点として機能する「防災道の駅」の整備も全国で進んでいます。
 「防災道の駅」は、大規模災害時等に救援活動や緊急物資等の基地機能を果たす広域的な復旧・復興活動拠点、あるいは、地域の一時避難所として機能する道の駅で、地域防災計画に位置づけられた道の駅を対象として、当面、各都道府県で1~2か所を整備目標として、施設の耐震化や防災施設(非常用電源、貯水タンク、防災倉庫、防災トイレ等)の設置、災害情報システムの構築などが進められています。これも道の駅の道路交通の要衝と言う地の利を活かした取組と言えるでしょう。
 
 来年は道の駅が誕生してから30周年。人間で言えば、幼年期、少年期を過ぎて青年期
の働き盛り世代で、これまでの成長には目を見張るものがあります。
 様々な場所から様々な人が集まる道の駅は、人と共に様々な可能性の種が集まってきます。落ちた種に目を凝らし、水を注いで大事に育てることによって、将来どんな果実が実るのか、今後の益々の進化が楽しみです。

2022年6月第1号 No.121号
(文責:小町谷信彦)