道の話題43「交通警察のパトロール~お国柄でツールはいろいろ」

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 先日のパリオリンピックでは、スケートボードでの日本選手の活躍に目が離せませんでしたが、オリンピック種目としてすっかり定着した印象を受けた方は多いかもしれません。
 今や電動キックボード(立ち乗りスクーター)も街中ではそれ程珍しくはなくなり、令和5年の道路交通法改正による新しい交通手段としてルール化で、市民権が得られた感じがします。
 さて世界には、この便利な新ツールをいち早く交通警察のパトロールに活用している国々があります。米国やポルトガル、トルコ、ドイツなどです。
 実は、世界の交通警察、どんな乗り物を使っているか調べて見ると、その国の地域事情に応じて、結構バラエティーに富んでいて面白いものがあります。

 まずご紹介したいのは、騎馬警察です。
 もちろん、どこの国でも主要なパトロール手段はパトカーや白バイですが、騎馬警察は今でも欧米などのかなりの数の国々で使われているようです。
 有名なバッキンガム宮殿を警備する騎馬警官は、ロンドンを訪れる観光客には定番で、ご覧になった方も多いと思います。
 しかし、騎馬警官はこのようなパーフォーマンスというだけではなく、騎馬ならではの様々な警備上の利点があるとされ、とりわけ、群衆のコントロールに優れた心理的効果を発揮するという点が特長です。

 つまり、馬は車両ほど速くはない代わりに柔軟に動け、必要に応じて群衆を威嚇でき、また車両が入れない狭い路地でも、人混みに分け入ることができます。  
 その上、人の背丈より高い位置から周囲を見渡せるので群衆をコントロールしやすいというわけです。
 それで騎馬警察は街頭警備やデモ警備には最適で、イングランドではサッカー大会や大規模な野外コンサートなどにも出動して、効果を発揮しているそうです。そして群衆は暴徒と化すと、しばしば警察車両を破壊しますが、興味深いことに、生き物である馬には直接的な危害を加えることは稀とのこと。微妙な人間心理にもマッチしていると言えそうです。

群衆整理を行うイングランドの騎馬警官 (エジンバラでの反G8サミットデモにて;出典 Wikipedia)

 実はあまり知られていませんが、日本でも大正時代の第一次護憲運動では、集まった群衆を憲兵隊が騎馬で蹂躙し鎮圧したという悲しい出来事があったようです。

 騎馬警察のもう一つの効用は、道なき場所、あるいは十分ではない、例えば国境付近とか、自然保護のために車両の進入を制限している自然公園等の森林地帯などでのパトロールや警備に最適という点です。
 ちなみに、カナダ国家警察の英語名は、”Royal Canadian Mounted Police”(王立カナダ騎馬警察)でカナダ建国の時代の名称が現代まで引き継がれています。

 さて、動物がパトロールに使われているのは馬だけではありません。
 エジプトでは砂漠のパトロールにラクダが使われ、フィンランドでは冬期のパトロールでスノーモビルが大活躍ですが、警察のユニフォームを着た鹿をお供にしたりするとか。どういう任務を果たすのかは謎ですが‥…。
 他にも、オーストラリアの水上警察のパトロールは水上バイク、自転車大国のオランダでは自転車、ベラルーシではトラクターや小型オートバイと、それぞれのお国の事情でツールはいろいろ。
 海外を旅行した際には、そんなところにも注目すると、思わぬ発見があるかもしれません?

警視庁騎馬隊(出典:警視庁ホームページ)

都内の幼稚園・保育園・小学校などに出向き、交通安全教育を行うのが主な仕事。各種パレードに参加するほか、信任状捧呈式(外国から赴任してきた大使が自国の元首から預かってきた信任状を皇居で天皇陛下に捧呈する儀式)で大使を乗せた馬車が東京駅から出発して二重橋まで進む際に馬車列警護を先導します。
日本の警察では、ほかに皇宮警察本部の騎馬隊と京都府警察の平安騎馬隊が組織されています。

2024年9月第1号No.151
(文責:小町谷信彦)